住職の言葉
「今月の言葉」や「法話」一覧ページです。
住職:長谷川岱潤
住職の言葉 - 一覧
2021年5月1日 - ≪今月の言葉≫
蟷螂の草につまづく施餓鬼かな 岸本尚毅
今年は牡丹も藤も終わってしまいました。
草花の早さは異常で、温暖化の勢いを感じます。
自然を変えてしまった人間の責任は
あまりにも大きいようです。
2021年4月1日 - ≪今月の言葉≫
五六人子供が居りて花まつり 白石峰子
今は五、六人が集まっても「離れて、離れて」の声が、
聞こえてきそうですが、以前は、三十人も集まって、
花まつり子ども会を開いていたこともありました。
いつかまた、そんな日が戻ってきますように。
2021年4月1日 - ≪法話≫
4月のお話
今月もホームページをご覧頂きありがとうございます。
春の彼岸も終わり、桜も散ってしまいました。気がつけばもう4月。年度改まり、学校では新学期を迎えます。
先月2件続けて、「当主が亡くなりお骨にしましたので、納骨をお願いします。」という電話が入りました。「ご葬儀はどうしたのですか?」と伺うと、「火葬儀で済ませました」とのこと。「いや、火葬したのはわかりましたが、ご葬儀は?」と聴いても、「だから火葬儀をしました」とのこと。相手は十代、二十代の若者ではない、八十を過ぎたご婦人と五十を過ぎた社会人です。返す言葉を失いながらも、「とにかくお寺で、お戒名をおつけする葬儀をしましょう。それからでないとお寺のお墓には納骨ができませんよ」と言い、お寺に来て頂くことにした。
最近葬儀社も、直葬のみを行う会社が増えてきて、電話帳などで探すと、お寺に連絡すらさせない葬儀社があるようです。火葬はあくまで唯々火葬で葬儀ではありません。ペットはそうしているかもしれないけれど、人間は葬送の儀を行って送ってあげたいと思います。業者が何と言おうと、直葬はブームに過ぎません。そのときはお金を使わずに済むかもしれませんが、後々の後悔と呵責の念に耐えられなくなる人が多いと聴きます。自分がどうなろうがかまわないと思っても、残された人が後々どういう思いをするかを考えて、逝く人もつまらない遺言を残さない方がいいと思います。葬送の儀とは、遺族が極楽へのおくりびとになる厳粛な儀式です。先祖が長い歴史続けてきたことを、百年にも満たない人間が決めるのはおこがましすぎるように感じます。
驚いたニュースがあります。今年の漫画大賞に『葬送のフリーレン』という作品が選ばれたそうです。多くの人が「告別式」などと言い、「葬送」と言う言葉を使わない現在、漫画の世界で題目になるとは驚きです。今の社会何でも漫画が先導するのでしょうか。
やっと緊急事態宣言は解除となりましたが、コロナの蔓延は止まりそうにありません。季節とは裏腹に気が晴れることがない毎日ですが、友人が以前こんな話をしてくれました。夜寝る前「あなたが今日一日の内でよかったことを思い出してください。」と言うのです。みんながよかった探しをします。雨がやんでくれてよかった。苺が食べられてよかったなどみんな違っていいのです。実は誰でもが答えを導き出すとき、幸せな顔になるというのです。どうぞその顔で眠りにつきますように。
合 掌
2021年3月1日 - ≪法話≫
3月のお話
春の兆しが強く感じられるようになり、啓蟄(けいちつ)、春分へと自然は目覚め始める季節となりました。
今年は東日本大震災から10年目を迎えますが、先日も大きな余震があったように、まだまだ地震の恐怖も続いています。
新型コロナ感染病があることで、花粉症や普通の風邪であっても人前で咳やくしゃみをすることがはばかられる毎日ですが、野口整体の創始者野口晴哉氏は著書で、「風邪や下痢は体の大掃除、風邪もひけない、下痢もできないような体になってはおしまいだ、ゴホンといったら喜べ」と言っています。五木寛之氏は「病気は治(なお)すものではなく、治(おさ)めるものだ」とも言っています。五木氏はまた「健康方はまちがいのもとで、人間はみんな死のキャリア」とも言っています。
風邪だって堂々と生きようじゃありませんか、死なない人間はいません。いかに余裕を持って死を見つめることができ、今を楽しく充実して暮らすかが問題ということでしょう。
昔西行法師が晩年「願わくば花の下にて我死なん それ如月の望月のころ」と詠み、釈尊の涅槃会2月15日に吉野の桜の満開の下で死にたいなあと願い、2月14日に亡くなられました。正に願いが叶ったわけですが、この2月15日は旧暦ですので、今年ですと3月27日になります。
お寺では毎年、涅槃図を2月の一ヶ月間掛けておりますが、今年は3月も掛けることにしました。サーラの樹の林の中で頭北面西に横たわる釈尊の涅槃のお姿の図「涅槃図の余白なきまで嘆き合う」田崎腸恵氏の句があります。余白なきまで嘆いている仏弟子、さまざまな人種の人々、動物、鳥類、昆虫であふれている図です。あらゆる生き物が皆平等のいのちであることを示している仏陀のメッセージです。最近いのちの格付けがなされ、「役に立ついのちとそうでないいのち」といういのちの分断が始まっています。価値でものを見る眼を肉眼といい、意味でものを見る眼を仏眼(智惠のまなこ)と仏陀は示しています。
コロナを正しく怖がる眼、怖がらなさすぎることもなく、怖がりすぎることもないよう、しっかり冷静に人間にとって何が大切かを判断しながら生活したいと思います。
合 掌
2021年3月1日 - ≪今月の言葉≫
お彼岸のきれいな顔の雀かな 勝又一透
今年は桜の開花が、又早くなりそうです。
桜が入学式から卒業式の花になり、
将来それもかなわなくなったら少し寂しいです。
せめてコロナが温暖化を止めてくれたらいいですね。
2021年2月1日 - ≪今月の言葉≫
まんなかにごろりとおはす寝釈迦かな 日野草城
緊急事態宣言も延長となり、外に出られぬ日が続く
十五日は涅槃会。沙羅双樹の間に横たわる釈迦の姿
まねして寝てみるのも一興かな
今は、病いもけがもしないことが、唯々尊い。