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住職の言葉

「今月の言葉」や「法話」一覧ページです。
住職:長谷川岱潤

住職の言葉 - 一覧


2022年3月1日 - ≪法話

3月のお話

 2月の末から急に暖かさを感じる季節になりました。その前の厳しさを思うと、まさに「冬極まりて、春近し」の言葉通りですね。
 また新型コロナのオミクロン株の変容で、感染は収束してくれるのかわからなくなってしまいました。いつまでこんな状況が続くのか不安が募るばかりです。
 今ヨーロッパではロシアのウクライナへの進攻が始まって大変な戦争状態になっています。「戦争は最大の人権侵害だ」と言ったのは解放の父松本治一郎氏ですが、全くその通りで、たとえどんな利用があろうと戦争だけはしてはいけないことだと、様々な惨状を聞きながら痛切に感じます。結局一番の被害を被るのは一般の市民であり、一番弱い立場の人々であることが多いのです。
 さて、今年は日本の人権宣言とも言われる水平社宣言ができてちょうど百年になります。これは部落差別に対して当時の政府がごまかしの融和政策しかしてこなかったことに、抗議して結成された水平社の結成大会で発表された宣言書です。この宣言書を書いた人西光万吉氏は浄土真宗の僧侶で、画家であり劇作家でもある彼は、情熱を持って書き上げました。「全国に散在する吾が特殊部落民よ団結せよ」で始まり「吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ ・・・水平社はかくして生まれた 人の世に熱あれ 人間に光りあれ」で終わるこの宣言は、今ではとても書けない差別語と過激な言葉に満ちていますが、人間は同情されて生きるのではなく、それぞれが尊厳を持っていることを確認し、人間としての誇りをもって生きるということを宣言した、まさに人権宣言です。「吾々はいたわられるものではない」とし、いたわる行為は相手の発言を封じ込める行為だとしているのです。これが今から百年前、大正11年に書かれていることに、そして世界人権宣言ができる26年も前にできていることに驚きさえ覚えます。
 しかし水平社はその後戦争に突入する社会の流れの中で、戦争に協力し組織は解散します。戦後改めて戦争に反対することをもって生まれたのが現在の解放運動と言えるでしょう。戦争が始まるときその中にいると誰もが自己を失いわからなくなります。仏教界もその当時進んで戦争に協力していました。この度のロシアでさえ、平和維持のためとしてウクライナに侵攻しています。アメリカは昔戦争を終わらせるためだとして原爆を投下しました。
 戦争だけはいかなる理由があろうとも認めることは絶対にしてはいけないことだということを,今こそ強く思う必要があるでしょう。

合 掌

2022年2月1日 - ≪法話

2月のお話

 寒さ厳しい今年の冬、ようやく立春を迎えますが、本当の寒さはこれからかもしれません。何年か前の冬、大寒が一番温かく、立春が一番寒かった年もありました。
 また新型コロナのオミクロン株への変容で、感染者の数は一気に倍増し、どこまで行くのか不安が募るばかりです。感染しないまでも、ここまで感染者が増えると、濃厚接触者となる可能性は高くなり、活動制限がかかってしまうことになりかねません。注意、予防しきれないこともあり、仏さまに頼るばかりです。
 さて、最近近所にできた新築の家の表札が、住所だけで名前がありませんでした。マンションなどでは表札すら出さない家がほとんどのようですが、一軒家でもそうなったのかと少し驚きでした。
 表札に名前を出さない理由は、以前は出すことによって何らかの差別に会うからと言われていました。つまり、有名人であったり、アジア系外国人であったり、刑を終えた人であったりしたことがわかってしまうから、会えて出さないという人がいたわけですが、最近は少し違うようです。名前を出さない、匿名を求める人がどんどん増えているという話をよく聞くようになりました。
 つい先日の『天声人語』で、「いわれなき中傷やトラブルから身を隠そうと、匿名を求める人が増えているのだろう、ただ、名乗らぬ人々の世界は魔物にも居心地が良さそうだ。名前とは、それを呼ぶ他者の存在を前提とした社会の産物。匿名の広がりには、寂しさとともに危うさを感じずにはいられない。」という文を見つけ、同感しました。あまりにも情報が広く、多く、拡散して伝わる中で、相手とのコミュニケーションが、その密度をどんどん軽薄なものにし、相手を傷つけることに、何も躊躇しない人々が多く現れ、密度の濃いコミュニケーションがなされなくなっている現代の象徴が、名前が消えて行く現象なのかもしれません。
 昨年のお寺の掲示板大賞の入賞句の中に「もっとも優しい言葉は、その人の名前を呼ぶこと」というのがありました。しっかり相手を特定し、今私が話したい人、今私が必要な人はあなたですと言う言葉が、まさに相手の名前を呼ぶ行為なのではないでしょうか。『天声人語』の最後は、「誰にとっても大切な名前、私が私であるための名前、それを伝えることの重みをかみしめる。」でした。
 私たち浄土宗の僧侶が最も大事にしている「お念仏、南無阿弥陀仏」とは、阿弥陀様のお名前を唱えることです。南無とはある先生が「こんにちは、おはようございます、こんばんはであり、お願いしますであり、ありがとうございます、全てです」と言っています。
 どんな状況、どんな感情の時でも、阿弥陀様の名前を呼んでみましょう。きっと力がもらえます。

合 掌

2022年2月1日 - ≪今月の言葉

節分の仮面が父の帰り待つ  村田悠水

 最近では節分の夜、子ども達の豆まきの声が、
聞こえて来ることもなくなりました。
父親が夕方までに家に帰ることがないからなのでしょうか。
お寺では毎年、妻と私の声が響いています。

2022年1月1日 - ≪今月の言葉

初詣願い少なくなりにけり  小林京子

年明けて何を仏さまに願い事したら良いのか、
こんな願い事は、仏さまに怒られないか、
年を重ねると、悩んでしまいます。
それにしても近頃は、願うことも少なくなりました。

2022年1月1日 - ≪法話

1月のお話

 それぞれに新年をお迎えのことと思います。
 本年のご健勝とご清福をお祈り申し上げます。
 さて、コロナ禍の年明けも二年目を迎えました。日本では一昨年の1月に新型コロナウィルスという言葉が初めて報道されてから、瞬く間に世界中でパンデミックが起き、その後五波を数える流行の波が押し寄せ、今また新しくい変異を遂げた株が、世界中を席巻しています。何時六波が来るか、心落ち着かない日々をお過ごしのことと思います。
 不安は動揺を呼び、動揺は暴力を呼びかねません。不安に打ち勝つには、不安を忘れることです。先日伺った天台宗のお寺さんで、何代か前の座主であられた山田恵諦さん揮毫の最澄さんの「忘己利他」の言葉を目にしました。己を忘れて、他の人の利益を考える。これこそ今を生きる知恵だと思いました。
 初詣でお寺や神社に詣でた時、何をお祈りしたら良いのか、受験の合格、昇進、結婚成就、病気平癒等々それぞれに多々あることでしょう。ただ仏教では仏さまにお願いして、仏さまが困るようなことはやめましょうと言われています。
 仏さまが困るお願いには、二つの原則があります。
 一つは逆転のお願いです。もう既に結果が出ていることを、覆すことをお願いすることです。
 もう一つは、他人の不幸を祈ることです。これは当然仏さまは困ります。仏さまは誰もが幸せになることを願っています。
 そうすると合格祈願はあなたの願いをかなえたら、誰か他の人が落ちることになってしまうので、やめた方が良いことになります。そのように考えて行くと、私たちの願いごとは、おおかたこの二つの原則に合ってしまいます。自らの努力が少ないのに結果を求めるのは逆転のお願いですし、自分の欲望を通そうと願うのは他人の不幸になることが多いからです。
 では私たちは何を願うことが良いのでしょうか。
 それはただ一つ、他人の幸せです。
 家族の健康を始め、世界中の人々の健康、幸せを祈ることが神仏への祈りです。先の最澄さんの言葉の通り、「忘己利他」の心が人間にとって最も必要であることと教えているのです。
 コロナ禍が続く中、コロナが怖くて病院に行けず、検査をしなかったせいで亡くなるかたもいらっしゃいます。また、コロナのために施設や病院で家族との面会もできず、寂しさの中で亡くなる方もいらっしゃいます。今何が大事なのか、何を怖がる必要があるのか、しっかり学びながら、大事なことを確認し守って行きましょう。

合 掌

2021年12月1日 - ≪今月の言葉

古傘で風呂焚く暮れや煤拂すすはらい  高浜虚子

煤払いは暮れの恒例の行事です。

この句から青森県外が浦の「雁供養」の話を思い出した。

雁が残した枯れ枝で焚いたお風呂を振る舞う。

「恩返し」ではなく「恩送り」の温かさ。